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阪神大震災による建造物の損壊と負傷
に関する実態調査調査結果の概要





 この調査は、1996年1月15日から2月22日の期間において、1995年1月17日、
阪神・淡路地方で発生した大震災における建造物の損壊と負傷・死亡の発生状況
等について、兵庫県宝塚市、川西市および西宮市の一部地域の120世帯とその世帯員
277人を 対象として実施したものであり、調査の実施主体は「阪神大震災による建造物の
損壊と負傷に関する実態調査委員会」である。






阪神大震災による建造物の損壊と負傷に関する
実態調査調査結果の要約


A.対象世帯・世帯員と負傷・死亡率


  1.調査対象世帯120世帯のうち、大震災による負傷・死亡者の いる世帯は、 20世帯で、
 全体の16.7%にあたる。

 2.120世帯の世帯員277人中、負傷・死亡者は24人であり、 負傷・死亡率 (割合)は、8.7%
 である。


B.地震発生時にいた場所


 1.阪神大震災は、冬季の早朝、5時46分に発生したものであり、 地震発生時 にいた場所は、99.6%
 の者が「自宅」である。

 2.自宅内の場所は、98.2%が「寝室」である。

 3.いた場所の階数をみると、全体では60.1%の者が1階にいた。
 次に、65歳以上の高齢者では、7割強の 73.4%の者が1階で 就寝等をしていた 実態にあり、
 64歳以下の 51.5%に比べて20ポイント以上も高い。


C.建造物の構造と負傷・死亡の発生状況


 1.世帯単位で建物の構造をみると、120世帯中102世帯と、 85.0%が在来型 の木造一戸建ての
 構造のものである。

 2.この建築構造の世帯での負傷・死亡者の発生状況は、102世帯中17世帯であり、
 負傷・死亡世帯発生率は、16.7%となる.

 3.屋根の構造でみると、120世帯中94世帯と、78.3%の 世帯が土を使用した瓦屋根 である。

 4.この屋根構造の世帯での負傷・死亡者発生状況は、負傷・ 死亡者のいる世帯 20世帯のうち、
 17世帯と85.0%がこの屋根構造である。 この屋根構造での負傷・ 死亡世帯発生率 は18.1%である。


D.建物の築年数の実態と負傷・死亡の実態


 1.調査した地域の世帯の建造物の平均築年数は、32.3年で ある。また、負傷・死亡者 を最も多く
 出している在来型木造 一戸建ての平均は、34.1年である。

 2.築年数階級で最も多いのは、25−49年であり、56.9%と 6割近くを占める。

 3.築年数と負傷・死亡の発生状況をみると、建築後の年数の 経過が長いほど、発生率 が高率となる
傾向がある。特に、70年 を経過すると、66.7%と7割近くとなっている。

築年数と負傷・死亡世帯発生率
0−19年・・・・・・・16.0 %
20−39年・・・・・・10.9%
40−59年・・・・・・23.5%
60年以上・・・・・・・35.7%


E.地震の直前、最中および地震後の行動


 1.地震(主震)の直前の行動をみると、発生直前では、277人中、272人と98.2%の者が就寝中
 であった。

 2.主震の最中にとった最初の行動は、130人と全体の46.9% の者が「布団の中に もぐった」
 としており、これに次ぐのが、「何も 出来なかった」の33.9%である。これらを合計すると、80.8%
 と8割をこえる。
 激震の最中に火の始末などの行動を求める ことは困難な状況にあることから、災害の マニュアルの
 見直しや、 ガス・電熱器具等の自動シャット・オフ等の機能が必須のものと 考えられる。

 3.主震直後の最初の行動で最も多いのは、「何もせずじっとして いた」の35.6%で あり、2番目
  と3番目にとった行動も、それぞれ この行動が最も多く、阪神大震災の揺れ のすさまじさと、
  行動抑制 を示している。


F.災害への世帯での備えの状況


 1.調査地域での世帯での災害への備えの状況をみると、 最も多いのは、救急箱の用意で、99世帯と
 82.5%の世帯 で準備されている。

 2.災害用の食糧・水の備蓄は6.7%、家具等の転倒防止措置 は、4.2%の世帯と 一部の世帯に
 限られている。
 この地域が、近年 地震災害が少ない地域であったことも 影響しているものと考えられる。


 G. 建物の損壊実態と負傷・死亡状況


 1.建物の損壊区分でみると、「一部損壊」が35世帯と29.2%を 占めて、最も多い。
  これに次ぐのが、「半壊」で32世帯と26.7%を 占めている。

 2.全壊で建物全体が倒壊したものが、16世帯と13.3%あり、この 世帯中、8世帯と 5割で負傷・
 死亡者を出している。ここでの負傷・ 死亡者発生世帯は、発生世帯全数の 4割をしめるものと
 なっている。

 3.建物の構造と屋根の構造をあわせた、複合的に見た建造物の構造 と負傷・死亡者 の発生状況を
 観察すると、在来型木造一戸建てで 土を使用した瓦屋根の構造の世帯が、 全体の世帯の69.2%を
 占めている。この構造の世帯では、16世帯で負傷・死亡者の 発生を みており、負傷・死亡の発生した
全体の世帯の8割を占めている。


 H.負傷・死亡者の属性・負傷部位・負傷原因・後遺症


 1.負傷・死亡者は、24人中女性が13人と54.2%を占め、男性 より多い。

 2.年齢階級別では、60−79歳が58.3%と6割近くを占めて 最も多い。

 3.負傷部位では、最も多いのが、「足」で41.7%であり、負傷の タイプでは、打撲・捻挫」が
54.2%と最も多くなっている。

 4.負傷原因で最も多いのは、「家具・電化製品の下敷き」で、 45.8%を占めている。

 負傷原因と構成割合
 家具・電化製品の下敷き........... 45.8 %
 ガラス・金属・建物の構造物の破片 ..... 25.0 %
 天井・柱等の建物の下敷き ..........16.7 %
 転倒転落 ................. 4.2 %
  その他の原因 ................4.2 %
   不明 ................... 4.2 %

 5.負傷による後遺症を調査時点で訴えているのは、把握した負傷者の18.2%
である。


 I.負傷者の救助と医療の受療状況


  1.負傷者の救助の状況をみると、救助された者は、負傷者22人中 9人と40.9%を しめている。
 救助した者をみると、救助された9人中 8人が「家族」により救助されている。
 これは、大震災の場合、 交通・通信の遮断、緊急時の即応性等の問題から、救急車 や
 レスキュー 隊等による救助に、現実上、よることが出来ないことから、家族や近隣 の救助が
 必要とされることをしめしている。

  2.救助されるまでの時間で最も多いのは10分で、3人、33.3%と なっている。
 9人中5人までが、10分以内に救助されている。

  3.負傷者の医療の受療状況は、22人の負傷者中、27.3%の 6人が利用しており、
 その内容では、入院が4人と66.7%をしめて 最も多い。

  4.負傷後、医療を直ちに利用していない理由をみると、「その他の 理由」、すなわち
  負傷の程度が軽微で受療するに及ばないもので あったとする者が多数を占めている。

  5.医療を利用をしなかった者について、事後の処置の方法を みると、救急箱等で 自宅で
 処置したとするものと治療等は全く 受けていないとする者が、それぞれ、 22.7%と最も多い。



 J.地震による精神的・心理的ショック等の状況


 1.調査地区の世帯員の地震による精神的・心理的ショック・不安定の実態は、275人 中220人と
 8割の者が、ショック等を受けたとしている。

 2.性別では、女性の方が84.4%と、男性の75.0%より10%近く ショックを受けたもの が多い。

 3.ショック・不安定の継続期間をみると、1年を経過した調査時点 でも、続いている者は、
 30.2%と3割にも及ぶものとなっている。
  これを性別でみると、男性は25.0%であるのに対して、女性は 34.7%と10ポイント も高い。

 4.上記からみて、女性は震災等の災害時に、精神的ショック・ ダメージを受けやすく、 かつ、
 その継続期間が長期化することを 示している。

 5.期間別では、継続中以外では、6ヶ月が17.5%と最も多くなっている。

  精神・心理的ショックの継続期間別構成割合( % )
  期間.分母=調査世帯員全員(除死亡),=ショック有りの世帯員
  3日間 ........ 0.7%........................ 0.9 %
  10日間 ....... 0.4 .......................... 0.5
  1ヶ月........ 3.6 ........................... 4.5
  2ヶ月........ 4.7 ........................... 5.9
  3ヶ月........ 12.7 ......................... 15.9
  5ヶ月........ 1.5 ........................... 1.8
  6ヶ月........ 17.5 ......................... 21.8
  10ヶ月....... 2.5 ........................... 3.2
  継続中....... 30.2 ......................... 37.7
  不明........ 6.2 ............................ 7.7

 6.精神的・心理的ショックの治療状況では、受診等した者はわずか 0.7%すぎない
ものである。

 7.以上からみて、災害の発生後から災害後相当の期間に渡り、 PTSD等の対策を
含め、精神・心理面での災害保健対策が 取られることが必須のものと指摘出来る。


 K.年齢階級別にみた負傷・死亡率(割合)


 1.調査した277人について、年齢階級別に、地震による負傷・死亡者 数を その分母 となる
 世帯員数で除して、負傷・死亡率( 割合 )を 算出してみると、全年齢では、 8.7%となっている。
 また、各年齢階級 では、60−79歳が13.0%で最も高くなっている。 65歳以上の 高齢者で
 まとめてみても、12.0%と高い割合をしめしている。

 2.一方、他の年齢階級では、4.0%から7.4%の範囲で、1/2から 1/3と低率で あり、
 これから、高齢者の高い負傷・死亡割合が 観察される。
 
年齢階級別負傷・死亡率( 割合 ) %
  全年齢 ....... 8.7 %
 0−19歳 ...... 5.6
 20−39歳 ..... 4.4
 40−59歳 ..... 7.4
  60−79歳 ..... 13.0
 80歳以上 ..... 4.0
  65歳以上 ..... 12.0


 調査の概要



  1.この調査は、「阪神大震災による建造物の損壊と負傷に関する 実態調査委員会」に
より実施 されたものです。

  2.調査対象の選定と規模:阪神大震災の被災地域で、兵庫県 宝塚市、川西市および
 西宮市の一部の地域から、有為に選定した 120世帯とこれに属する世帯員277人を調査対象
 として実施しました。

 3.調査した地域は、大震災の震度7の地域のおおむね北東の端に 位置しており、 震度は
6−7と推測される。

 4.調査項目
  地震発生時にいた場所
 建造物の構造と損壊実態
 主震直前・最中・主震後の行動
 災害に対する世帯の備えの状況
 負傷・死亡の実態
 救助状況
 医療の利用状況
 精神・心理的ショック等の実態
 その他の関連項目

 5.調査方法と実査:調査員が世帯を訪問し、調査の趣旨や調査
 内容等を説明して、調査票への記入を依頼し、後日これを回収
 する方法で調査した。

  6.実査の期間:1996年1月15日から2月22日の期間に実施した。





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